7 水中騎馬戦とファーストキス 2

騎馬は完全に崩れてしまった。
誰もそれで「あーあ」「何やってんだよ」とか言うわけでもなく、というか、周りが一気に近づき合って交戦体勢になったから崩れた騎馬は場外へと脱出するだけだった。
ボクはさっきから心臓がずっとバクバクと鳴りっぱなしだ。
騎馬が崩れたがどうとかどうでもいいんだ。
女の子とファーストキスをキメた。
唇の感触をゆっくりと味わう時間なんてなくて、まるで唇で相手の唇を殴ったかのような気持ちではあったんだけど、それでもボクにとってはそれは人生で最初のキスであって記念すべきイベントだった。
ボクの目の前にはボクと同じ様にただ半開きの口を開けて濡れたセクシーな髪をしてるヤヤさんがいる。
「隅のほうに逃げとこっか」
ボクは勇気を出して声を出した。
「あ、う、うん」
ヤヤさんもそれに応じた。
みんなの隙間を縫うようにして移動する。ヤヤさんが遅れてこないようにボクは無意識のうちにヤヤさんと手を繋いでいた。そのまま引っ張ってプールサイドの隅のように到着した。でも手は離さなkった。手はボクも力を入れてたけど、ヤヤさんも離そうとする気配が無かったんだ。だから嬉しかった。
今日会って、まだお互いの名前しか知らないのになんだろう、この凄い温かい気持ち。友達という感覚とは違う。恋人?でもまだ全然知らないのに?プールの中なのに体温が伝わってくるみたいな気がする。
ただ黙ってボクとヤヤさんはそこで手を繋いでいた。そして時々ボクはヤヤさんの肩とこすれあうのを楽しんでいた。お互いが肌がとても綺麗で、もし場所が場所ならこのまま水着を脱いじゃって抱きしめ合いたいな、なんて思ってしまう。ヤヤさんも同じみたいだ。女の子のほうからつんつんと肌をくっつけてくるなんて、もしボクが男だったら下心(女性が男性に寄せる金銭的な下心)っていうのを察してしまうかも知れない。でもそういうんじゃないんだ。隣にはボクと同じで中身が男で外見が女の子のヤヤさんがいる。彼女には下心なんて無い。あるわけないよ。
暫くそのまま二人の時間を楽しみながら観戦する事にしたんだ。