7 水中騎馬戦とファーストキス 4

キヨハルはあっという間に沈没していた。
過積載の船(っていうのがあるのか知らないけど)が自重に耐えれなくて沈没する様子を思い浮かべてもらったらいいかもしんない。ゆっくりとゆっくりと水中に没して、それから何度か男子達は持ち上げようとしたんだけどもう騎馬の状態ではなかった。バラけた中でキヨハルが浮きてきて、そのままプールサイドのほうまで流れ着いていた。
我が新聞部で健闘したのはユタカぐらいかな…。
むっつりんは開始と同時に潜水艦の如く頭だけを出した状態で凄い速さで移動していた。キモかった…。応援してた人達も「あの頭だけが動いてるのはなんなの?」と口々に言ってた。それが試合に参加しているのならまだ分かるよ。実際は水中に自分で沈んだり浮いたりを繰り返して、敵が近づいてきたら逃げまわってるんだからね。何をしてるのやら…。
最後に奪った鉢巻の数を比べて、ボク達のクラスの負けが確定してしまったよ。でも良かったよ。うん。トーナメント戦でさ、勝ったチームは体力がなくなった状態で次の試合をしなければいけないんだから。
負けた方のクラスは着替えて外にでなければいけない。
ボクはヤヤさんと離れるのが寂しかった。
別に仲良くなったというわけじゃないんだ。ただ隣にいて一緒に試合を見てたっていうだけで、ボクもヤヤさんもお互いにそれほど話上手じゃないから会話は無かったけど、ただ寂しかった。そういえばまだ手を繋いでたんだ。
「そろそろ行くね」
とボクが言うのにヤヤさんは無言でこくりと頷いた。
ここで最後にボクはプールサイドに上がる途中で足が滑るという作戦でヤヤさんの胸の中に飛び込むのに成功した。「わわ、っと、ごめん」と胸の谷間でボクが言うと、それはもう想定の範囲内みたいで、ヤヤさんは「大丈夫?」と言いながら何故か唇に唇でちょんと触れた。
心が通じ合うってこういうのを言うのかな…。