酒井法子の裏の顔、ヤクザとの繋がり。そして岡田有紀子とそのマネージャー(&フリーカメラマン)の不可解な死を考える

ごめんなさい、事件の直後に死亡したのはフリーのカメラマンだった。ちょっと書き直しました。考えれば考えるほど、奇妙な事件が多いね。サンミュージック繋がりで3人自殺してる。オカルトっぽいけど、それで片付けたら連中の思う壺なんだよね。それと当時の番組についても(ニュースなどは除いて)歌番組などでは岡田有紀子の死についてはなるべく触れないようにしている節がある。すごく奇妙。
では、本題。改良版です。
酒井法子はヤクザの家に生まれる。父親は山口組系伊豆組の酒井組、酒井峰吉組長(本名は酒井三根城。初代伊豆組伊豆健児組長の舎弟)しかも親父は何回も離婚を繰り返し、沢山のガキを孕ませ、そのなかの一匹が法子だった。ちなみに、いま警察に捕まってる弟とも腹違い。父親はヤクザの中のシノギでももっとも最悪な覚せい剤売りだった。これが理由で伊豆組を破門され、地元に戻って闇金で荒稼ぎをするようになる。
まだ法子が小さい頃に母親と父親が離婚。法子は母親側に引き取られる。しかし、離婚後すぐに母親は自殺に見せかけて殺される。だが、不可解な事に、父親もその後しばらくして交通事故死。これについても事故として片付けられたが不審な点が多くあり、ヤクザの権力闘争が伺える。
産みの母と実の父の死。それは法子の精神を崩壊させるには十分な要素だった。
法子は消して目立とうとせず、ひた向きを振舞った。目立てば自分も殺される。そう思ったからだ。この時から彼女の中にはドス黒い修羅が住んでいたのかも知れない。
そして法子はアイドルとしてデビューする事となる。
所属していた事務所「サンミュージック」には法子以外にもアイドルがおり、人気もあった。そのアイドルの名前は「岡田有紀子」。頑張り屋だった有紀子は親の反対を押し切って芸能界入りを果たした苦労人だった。順調に人気を集めて将来も有望だった。だが、法子がサンミュージックに所属してから、何故か事務所から有紀子に対する風当たりが強くなり始める。
ある日の事だ。由紀子は事務所で見てはならないものを見てしまう。それは酒井法子覚せい剤を摂取している場面であった。
「誰にも言わない!誰にも言わないから!」
哀願する有紀子を尻目に、法子は自らのアイドルとしての寿命を悟った。
(秘密を知られた以上、生かしておくわけにはいかないわ)
家族の中にヤクザのいる法子におって、人間を殺すのに苦労はしなかった。たった一本、電話をするだけで人の命を奪える。自らの手を汚さずに。
法子がサンミュージックに所属してから、彼女はヤクザを通じて事務所に対して圧力を掛けていた。有紀子を引退に追い込む為の圧力であったが、それは自殺という形で現れてしまう。奇しくも、法子が殺害を要請したその前に、有紀子はガス自殺を図っていたのだ。そう、タイミング的にはこれ以上のものは無かった。
そして有紀子はサンミュージックの屋上から飛び降り自殺をした。表向きは。
その直後の様子は様々な雑誌で取り上げられる事となるが、有紀子のおっかけをしていたフリーのカメラマンA(調査中です)は、自殺現場で奇妙な人影を見かける事となる。
(事務所の人か?)
ただ、その時はアイドルの自殺という衝撃的な現場の写真を押さえた事で興奮状態にあり、それについてはAにとって重要ではなかった。Aはその後、写真をフライデー編集部へ売り、満足行く金額を貰う事となった。
アイドルの張り込みをしていたAは、十分な金がはいった事もあり、しばらく休暇を取る事にした。行きつけのサウナで彼が疲れをいやしていると、客の一人が話しかけてくるのだ。
「にぃちゃん、フライデー見たよ。あんたが写真取ったんだろ?」
「あ、あぁ。なんでそれを知ってるんだ?」
「その方面の知り合いがいるんでね。アイドルのスクープ取った奴がいるって聞いてさ。Aさんだろ?ありゃ凄かったなぁ…。いやね、俺もあの現場にいてさ、カメラがあったら撮ってやりたかったんだが…残念さね」
「へぇ〜あんたもカメラマンかい?」
「いやあ、そうじゃないけど。アイドルの追っかけをやってるだけの奴でさあ。そういや、あのビルの屋上で人影みたいなのを見なかったか?」
(人影?)
Aは、その時初めて、ビルの屋上に人影らしきものがあったことを思い出した。その人影は有紀子が飛び降り自殺をした後、まるでビルから覗き込むように下を見下ろしたのだ。サンミュージックの誰かだろう、としか思っていなかった。
「そういや、確かに人がいたなぁ」
「顔は見たか?」
「そりゃあ見たさ。サンミュージックの誰かだろう」
男はそれを聞いて、しばらく黙っていたが汗をタオルで拭いたのだ。特に手を重点的に。そして、表情は笑顔のまま男はAに言う。
「見たか。そうか…そいつは…生かしちゃおけないな」
「え?」
男はタオルで手をくるむと、Aの首根っこを掴んだ。
「ちょっ、何をす」
サウナで身体が火照っていたAは、抵抗する体力もそれほど残っていない。男は凄まじい怪力でAの顔をサウナストーブに押し付けた。
「ぎゃあああああああ!」
周囲には肉が焼け焦げる臭いが立ちこむ。Aがどんなに苦しもうが男は顔色一つ変えなかった。彼にとってそれはただの作業でしかないのだ。彼は依頼のあった人間を殺す事を生業としていた。
Aが絶命したのを確認してから男はサウナ室を後にした。
「大変だっ!誰かがサウナストーブに飛び込んだ!」
数日後、ニュースをテレビや雑誌で知る法子。その表情は清清しいものだった。
「法子お嬢様」
そこに居たのはあの時、サウナ室でAを殺したあの男だった。
「カメラマンもちゃんと始末した?」
「はい。奴は岡田の死体を足でひっくり返して顔も撮ってたみたいですね。フライデーにそれも持っていったみたいですが、いくらなんでもやりすぎだろうと却下されたようです。何でも、バチが当たったと業界では噂になっていますね」
「誰かに見られたんじゃないの?」
「いえ。誰にも。警察にはAがふらふらとサウナストーブのほうへ吸い込まれるように歩いていったって話しておきましたよ」
「アイドルの自殺現場を写真に収めたカメラマンの不審な死…オカルトね…」
法子はいつもと同じようにスプーンの上に覚せい剤を乗せて、それをアルコールランプであぶりながら、水蒸気を吸引した。目はふらふらと宙を泳ぎ、そのまま宙を見ながら、まるでそこに誰かがいるかのように話し掛けた。
「邪魔者は消せばいいんでしょ?お父様」
そこにいるであろう亡き『お父様』に向かって、まるで褒美でも貰おうと思う子供のような笑顔になっていた。
記者会見に追われるサンミュージック広報担当。だが、その発言は感情のない、淡々としたものだった。サンミュージックだけではない。彼女が以前出演した事のあるベストテンやヒットスタジオでも、追悼の言葉を早口で伝えただけだ。様々な推測がファンの間で流れていたが、もうテレビでは彼女の話はしない。忘れさられるのを望んでいるかのように。
そして14年の月日が流れた。
奇しくも、岡田有紀子のマネージャーであった溝口伸朗は法子のマネージャーとして仕事をこなしていた。有紀子の自殺で心身ともに衰弱していたのは過去の話。14年の月日はゆっくりとだが、その傷を癒していた。そんなある日の事だ。溝口は法子を迎えに彼女の自宅へ。そこで、半開きのドアから聞こえて来た話に彼は驚愕する事となる。
法子の浮ついた声だった。誰かと話しているようだ。
「有紀子?あ〜いたわね。そんな奴。飛び降り自殺だっけ?最ッ高ッだったわ!アレは!あの女の顔、アスファルトに叩きつけられて粉々よ!内臓もぶちまけて、糞尿も垂れ流し!アイドルの死に方としては最悪ね!」
話相手は夫ではない、溝口の知らない男の声だった。
「ほっといても引退していたのに、どうして手をくだされたんです?」
「見られたのよ。アタシがキメてる瞬間をね。事務所の奴等は知ってるけどさ、有紀子は知らないのよ。それにあの子、真面目でしょ?サツにチクられたら後々面倒になるしさ。それに自殺を図ったのよ。未遂で終わったけど。だから殺すタイミング的には一番よかったのね」
法子の目はあらぬ方向を向いており、頭はふらふらと宙を泳ぐようだ。そして全身に汗を掻いていて、それが覚せい剤によるものだと判る。
溝口は怒りで身体が震えるのが自分でも判った。そして本能の赴くまま、部屋へと侵入して法子につきかかった。もちろん説教でもなければ脅しのつもりでもない。
『殺す』つもりで。
「お前がッ!お前が有紀子さんを!彼女がどんなに頑張っていたのか知ってるのか!親に猛反対されても、高校受験を頑張って、親が望んだ高校に受かったんだ!やっと掴めたアイドルへの道を!お前みたいな人間の屑は!死ね!死ねぇぇぇぇ!」
法子の首を絞める溝口。だが、すぐに隣にいた彼女のボディガードと思われる部下に止められる。それでもなお、溝口は法子を睨む。目の前にいるのが岡田有紀子を殺した犯人。彼女の人生にピリオドを打ち、そして自分の心に深い傷を負わせた憎むべき存在。
「殺してやる!殺してやる!」
叫ぶ溝口。
だが、冷ややかにそれを見下ろす法子。
「殺して。こいつを」
冷たく言い放った。
「証拠は残さないで。岡田が死んだ事で後を追って自殺したように見せかけてね」
法子は落ちつた様子で、再び覚せい剤をスプーンの上におくと、それをアルコールランプで熱した。その蒸気を鼻孔から深く吸い込んで、また目が空を泳いだ。顔中に汗を掻いて、激しく運動した後のスポーツ選手のように。だが、その笑顔はスポーツとはかけ離れた邪悪な欲求を満たした事で得られたものだった。
「あたしにたてつく者は、消せばいいのよ。ねぇ、そうでしょ?お父様」
隣の部屋からは溝口のものと思われる断末魔が響いた。